馬車林由未 【綻小路】2006年5月19日-30日

見た目の華やかさと、人形というカテゴリーの特殊さが目についてしまう林さんの作品群。
しかし本人はその作品の目指す「本当」のところにとても努力を払っているのだなぁ、と感銘を受けた初日でした。
見たつもりになって作っているけれど、本当に見ているのか?ともう一度問い直すことをしたい、という彼女。確かに「人形=ひとがた」はまず人でなくてはならないのかも知れないのです。
ファンタジーという自由を得た中で、真実が込められていなくてはただの空想上の作りものに終わってしまう。作りものであるけれど、本物で表現できる以上の真実を求めたからその枠を外したのではなかったか。そんな思いを持ち続けることが「道を探っていく人」としての林さんの価値です。
作品作品
作品左の人物の後から付いていく犬がいます。

一昨年の展示が下の方にあります。そこに書かれた私のコメント「箱根の富士屋ホテルのプールや...」というのを発見して我ながら驚き。エキゾチックだと思うと書いてあるのですが、ある作品にキッチュに通じる「ニセモノ」ならではの魅力を感じていたのかも知れないと思い至りました。それは少しも劣るものではないけれど、林さんが目指すものは違ったのです。


作品
作品昨年夏、茅ヶ崎市美術館でお面のワークショップに参加した小学生の女の子が来てくれました。こんなふうに茅ヶ崎と仲よくなってきつつある林さんでもあり、こどもを通じて世界が広がっていく親というものもなんだか素敵な立場です。

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【紡】2004年

2004年の林さんの作品は古事記から発想した操り人形が
主体。最初にどうしても作りたいと思ったのは下真ん中のイザナミだったのだそうです。
作り続けるうちに、生まれた作品との縁を感じるようになって、自分から生まれる物たちや家族などとのストーリーを「紡ぐ」気持ちで展示してみよう、という気持ちの展覧会。
右の半立体は古ぼけた天上のような雰囲気。箱根宮の下の富士屋ホテルのプールを思い出してしまいました。ご存じの方いるでしょうか?ちょっと怖いような、正視してはいけないような怪しさのある魅力。とっても説明しにくい隙間の魅力です。で、木なんです。まるで東照宮の猫や欄間のようなシャープでないものの魅力。林さんに対して感じるのは初めてなんですが、うーん、これってエキゾチックだと思う。
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左:イザナギ 上:イザナミ
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worksworks林さんのもうひとつの世界がこれ。ファンタジーに力を借りて、違う姿にしているのだけれど人間というものを丸ごと可愛がってしまっています。
手に入れやすい価格の小さなもの達が人気です。


【隙間涙】2003年
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若い林さんは私のマンガ談義友だちで、山田風太郎などの指南役でもあります。ファンタジーが大好きなのも共通点でいつもそのあたりの話で盛り上がってしまう。映画もお気に入りを勧めてくれます。カロカロハウスが原宿にあった時、「脈動」という三人展をやってくれました。その時から作品は強烈な形とジャンルだけでなく「匂い」のようなものを放っていてとても力を感じていた人です。

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この作品展から続き物(これはファンタジー好きにとっては宿命みたいなクセかも)が始まります。既にキャラクターはできあがり、いつ彼等が動きだしてもおかしくない感じ。読み物としての話がまとまり出すのも、また楽しみ。
この物語りはA5判のリーフレットになっていて(¥315)、これまでの林さんの作品歴にも触れています。いつでもショップで扱っています。
ファンタジーは現実そのままの人 間を題材としていないにも関わらず、ものすごく人間が描かれているという背骨に、ディテール 全部、どこを切ってもつじつまの合うフィクショ ン100%の整合性ある世界でなくてはなりません。
作る側も鑑賞する側も想像力と持続力を求められます。 とっても大人の物だと思うのです。ビジュアルから入ったファンタジー作家はこれまでなかった分野。 道は険しいけどぜひがんばってほしいなぁ。
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